私の友人に家業の写真館を継いだ男がいます。修正技術にかけては東京でも一、二を争う腕前とかで、選挙の季節になるとポスター用写真の注文が殺到し、おかげで商売繁盛、目抜き通りに鉄筋三階建ての店舗兼用住宅を新築することになりました。彼はそれまで父親が借地して建てたやはり店舗兼用住宅に住んでいたのですが、新築資金の一部にあてるためにその家を売り、約三〇〇〇万円の譲渡所得があったので、ある日その税務相談に私を訪ねてきたのです。
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話を聞いた私は、即座に「事業用資産の買い換えの特例」を税務署に申告するようアドバイスしました。この特例についてはすでにお話ししましたが、友人のようなケースでは、この特例をうまく利用すると、税金はまったく払う必要がなくなります。友人がそれまで住んでいた店舗兼用住宅では、店舗部分の面積が家屋全体の五分の一を占めていました。ふつう店舗兼用住宅を売った場合、店舗部分が全体の一〇分の一以下なら、家屋全体が居住用とみなされ、居住用財産の三〇〇〇万円特別控除が適用されます。ところが、友人の場合のように一〇分の一をこえると、店舗部分に相当する譲渡所得が課税対象となり、三〇〇〇万円の五分の一、六〇〇万円について一三〇万ほどの税金がかかります。しかし、店舗兼用住宅の買い換えの場合、この店舗部分に相当する売却代金を新しい店舗の設備、造作、機械、什器、備品など事業に必要な償却資産の購入にあてれば税金はかからないのです。これが事業用資産の買い換えの特例です。したがって、友人の場合は、六〇〇万円を新店舗に投資すれば、すこし出費はかさみますが、税金をただ持っていかれるより、ずっと将来のためになるはずです。なお、この特例においては、売った店舗が貸店舗であっても、その貸店舗部分に相当する売却代金で、新しく買った自宅の一部を、また貸店舗に改造すればいいのです。ただし、この特例も、譲渡した財産の所有期間が、譲渡した年の一月一日現在で一〇年をこえるものに限られます。