昔の大工たちはさまざまなタブーを設けることで、現実に起こりうる危険や災いを最小限にとどめ、井戸や家を守ってきました。その意味で、まさに家相は建築基準法のない時代の実質的なリスクマネジメント(安全管理)だったと言えます。しかし、庶民の言い伝えまでが家相として明文化されているわけではありません。いわゆる家相の対象となるのは、武家屋敷や庄屋、豪商の家など、大きな敷地とそれなりの財力のある家でした。「長屋に家相はない」と言われることがあります。
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長屋はもちろんのこと、路地裏にひしめき合って建つ小さな町屋や貧農の家では、そもそも家相にしたがって建てる余裕などなかったでしょう。だとすれば、ほとんどの家がひしめき合って建ち、「敷地が三〇坪もあれば贅沢」と言われる現在の都会では、どういうことになってしまうのでしょうか。二一世紀のいま、家相をめぐってさまざまな矛盾や困った問題が多々発生していることも、また事実です。